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主な内容 ●巻頭言…2 ●学会案内(学術集会委員会)第162回日本獣医学会学術集会4 ●JCLAM(JALAM共催)ウェットハンド研修会報告…11 ●JCLAM(JALAM共催)ウェットハンド研修会案内…14 ●2019-2020年度総会開催案内15 ●理事会報告…16 ●委員会報告 1.実験動物学教育委員会19 2.学術集会委員会19 3.情報・編集委員会19 4.研修委員会20 5.前島賞選考委員会20 6.実験動物法規等検討委員会20 ●日本実験動物医学専門医協会(JCLAM/IACLAM) 1.実験動物医学専門医協会(JCLAM)からの挨拶…21 2.2019-2020年度総会開催案内…23 3.第12回理事会報告23 4.2020-2021年度JCLAM専門医認定審査・専門医資格更新 スケジュール25 5.IACLAM25 ●JCLAM委員会報告 1.総務部27 2.認定委員会27 3.試験問題作成委員会29 4.試験実施委員会30 5.試験問題検討委員会30 6.学術委員会30 7.研修委員会31 8.国際渉外委員会31 9.レジデントプログラム委員会32 10.将来検討委員会32 11.認定試験ワーキンググループ32 ●事務局便り会費納入状況とお願い…34 ●編集後記35 ●日本実験動物医学会ホームページ36
前号の巻頭言を書いてから今号の巻頭言の間に動愛法の改正が行われました。実験動物関係の条文の改正は行われませんでしたが、附則に動物実験を行う機関の登録制と3Rの義務化について検討することが付け加えられました。会員諸氏の所属する機関では、動物実験計画書審査の際に 3Rは最重要項目として審査されていることと思います。従いましてこの附則に特に動揺することなく、これまでと同様にしっかりとした動物実験の管理を続けて頂ければと思います。 さて、今回は実験動物医学専門医のレジデント制度について少々紹介したいと思います。
JALAM会長がJCLAMのレジデント制度について巻頭言で述べることに違和感を感じられる方もおられるかもしれませんが、JALAMを立ち上げた一番の理由は我が国にも実験動物医学専門医の制度を確立することでありましたし、2012年にJCLAMが独立した後も、JCLAMの支援はJALAMの重要な役割の一つであります。また、JALAM会員の約1/3は専門医の方ですし、専門医を取得するためにJALAMに入会された方も多数おられると思います。そういった意味からは JCLAMのレジデント制度がどのようになるのか関心を持っておられるJALAM会員の方も多いと思います。 JCLAMは米国のACLAMに倣って設立されました。専門医の認定は研修と試験を柱としております。研修として最も重要なのがレジデント制度です。米国ではNIHの財政的支援を受けて実験動物医学のレジデント制度が整っています。しかし我が国ではそのような国からの支援制度ができておらず、従ってレジデントの経験がなくとも受験資格を与える形で専門医制度が設立されました。レジデントとして研修する代わりに、JALAM会員歴3年、その間にJALAM/JCLAMが提供する研修会(シンポジウム等)の受講、ウェットハンド研修会の受講を受験資格として来まし た。しかし専門医制度ができてから20年が経過し、これまでに150名を超える専門医を認定して来ており、現時点でも130名を超えるactive専門医が全国の大学、企業等の研究機関に所属しております。このような状態となれば、例えば大学においては大学院生あるいは研究生として専門医の指導の元研修を受けることができますし、企業においても新入社員として専門医の指導の元OJTとして実験動物医学の研修を受けることができます。これ即ちレジデントと言って差し支えないのではないでしょうか。後はJCLAMが一定の条件を課し、これをレジデントと認めること で米国のようなレジデント制度を作ることが可能になります。
レジデント制度を作ることを急いでいる理由にはもう一つあります。JCLAMがACLAM、ECLAM、KCLAMと共にIACLAMの一員になっていることはご承知と思います。最近、フィリピンやインドでも実験動物医学専門医制度が作られ、IACLAMへの入会を希望しております。そこでIACLAMでは入会条件として、専門医制度がきちんとできていることを求める方向で動いています。そこで専門医制度の柱としてレジデント制度と試験がminimum requirementとなる公算が高い訳です。 現在私はIACLAMのtraining taskforceにJCLAMからの委員として定期的に電話会議に参加しております。このtaskforceではこのようなことを話し合っております。また、この流れを受けてJCLAMのレジデントプログラム委員会委員長を拝命しており、JCLAMにおけるレジデントプログラムの確立について急ピッチで審議しております。来年のJCLAM総会までにはレジデントプ ログラムの概要が出来上がり、総会の承認を受けて動き出すことを予定しております。詳細についてはこの場ではまだ記載することができませんが、そのような予定で動いていることをJALAM会員諸氏にもご承知頂ければと思います。JCLAMにレジデント制度が出来上がること で、ACLAMとほぼ同等の専門医制度が完成します。JALAM会員諸氏には引き続きご支援の程どうぞ宜しくお願い申し上げます。 学 会 案 内 (学術集会委員会)
日本獣医学会関連の日程 第162回日本獣医学会学術集会
会期:2019年9月10日(火)~ 12日(木) 会場:つくば国際会議場 (〒305-0032 茨城県つくば市竹園 2-20-3)
●日本実験動物医学会(JALAM)総会日時:2019年9月12日(木)11:00~12:00 場所:第9会場(中ホール300)
●JALAM理事会 日時:2019年9月10日(火)10:00~12:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JALAM一般演題発表 日時:2019年9月11日(水) 9:00~12:00 14:30~18:00 場所:第9会場(中ホール300)
●JALAMシンポジウム 「先端生体イメージング技術が切り拓く動物実験の新たな可能性」 日時:2019年9月12日(木) 9:00~11:00 場所:第9会場(中ホール300) 座長:戸村道夫(大阪大谷大) 北村浩(酪農学園大)
1.「マルチスケール蛍光イメージングによる生体現象の理解」 ○戸村道夫(大阪大谷大・薬・免疫) 2.「皮膚炎における一次感覚神経のイメージング解析」 ○岡田峰陽(理研・IMS・細胞動態) 3.「生体イメージングで明らかにする脳免疫細胞の機能」 ○和氣弘明(神戸大・医・システム生理) ●JCLAM/JALAM研修委員会 日時:2019年9月10日(火) 9:00~11:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JALAM教育委員会 日時:2019年9月10日(火)13:00~14:00 場所:会議室3(小会議室402)
●JALAM情報・編集委員会 日時:2019年9月10日(火)14:00~15:00 場所:会議室3(小会議室402)
●JALAM法規等検討委員会 日時:2019年9月11日(火)10:00~11:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JALAM前島賞・功労賞選考委員会 日時:2019年9月11日(水)11:00~12:00 場所:会議室5(小会議室404) ●日本実験動物医学専門医協会(JCLAM) 認定試験 日時:2019年9月9日(月) 12:00~15:00 場所:第10会場(小会議室303)
●JCLAM総会 日時:2019年9月12日(木)13:00~14:00 場所:第9会場(中ホール300)
●JCLAM理事会 日時:2019年9月10日(火)16:00~18:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JCLAMフォーラム 「日本における微生物モニタリングの現状」 日時:2019年9月12日(木)14:00~16:00 場所:第9会場(中ホール300) 座長:伊藤麻里子(名大) 鳥越大輔(熊本大)
1.「バイオマテリアルの微生物検査」 ○林元展人(実験動物中央研究所) 2.「微生物モニタリングにおける蛍光ビーズ法の有効利用」 ○丸山滋(日本チャールス・リバー) 3.「嗚呼、肺パスツレラ」 ○池 郁生(理研BRC)
●JCLAM試験問題作成委員会 日時:2019年9月9日(月) 15:00~18:00 場所:第10会場(小会議室303)
●JCLAM将来検討委員会 日時:2019年9月10日(火) 9:00~10:00 場所:会議室4(小会議室403)
●JCLAM認定試験WG 日時:2019年9月10日(火) 9:00~10:00 場所:会議室3(小会議室402)
●JCLAM認定委員会 日時:2019年9月10日(火)12:00~13:00 場所:会議室3(小会議室402) ●JCLAM総務部会 日時:2019年9月10日(火)12:00~14:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JCLAM試験問題検討委員会 日時:2019年9月10日(火)14:00~15:00 場所:会議室4(小会議室403)
●JCLAM国際渉外委員会 日時:2019年9月10日(火)14:00~15:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JCLAM試験関連委員会合同会議 日時:2019年9月10日(火)15:00~16:00 場所:会議室2(小会議室401)
●JCLAMレジデントプログラム委員会日時:2019年9月11日(水)11:00~13:00 場所:会議室2(小会議室401)
●ウェットハンド研修会 「Ⅰ.げっ歯類およびウサギの獣医学的管理」研修日:2019年9月8日(日)~9日(月) 場所:実験動物中央研究所 〒210-0821神奈川県川崎市川崎区殿町3丁目25-12
●エクスカーション 日時:2019年9月11日(水)19:00~ 場所:筑波ハム自然味工房https://www.tsukubaham.co.jp/ajikobo/ 実験動物医学シンポジウム抄録 「先端生体イメージング技術が切り拓く動物実験の新たな可能性」 日時:2019年9月12日(木)9:00~11:00 場所:第9会場(中ホール300) 座長:戸村道夫(大阪大谷大)、北村浩(酪農学園大)
(1)マルチスケール蛍光イメージングによる生体現象の理解 演者:戸村 道夫 先生(大阪大谷大学・薬学部・免疫学講座)
蛍光タンパク質そして生体内 2 光子レーザー顕微鏡観察技術の発達により、生体内での細胞の 動態、相互作用に加え機能発現の可視化が実現している。生体内 2 光子レーザー顕微鏡観察は一般的に数 100μm 立方の中で起こる生命現象を直接観察し、生きている体の中で起こっている生物現象を目で見て理解できる。それに対し、近年開発が進んだ組織透明化法は、固定化された組織ではあるが数 mm 単位を超えマウスなどの個体レベルで蛍光イメージングによる単細胞レベルの 3D 局在の可視化観察を可能にした。我々は、光蛍光タンパク質 Kaede、あるいは KikGR を発現するマウスを用い、生きたマウスでの細胞のマーキングを可能にした。そして、全身レベルで定常時および病態時における臓器間の免疫細胞動態の解明、さらに例えば腫瘍塊から所属リンパ節に移動した腫瘍浸潤樹状細胞と抗腫瘍抗原特異的 T 細胞の相互作用の可視化など、臓器間を移動した細胞を同定と可視化による生命現象の理解を進めている。また、臓器内で観察した細胞や臓器間を移動した細胞の詳細な性状の理解は、観察・解析している生命現象におけるその細胞の役割、分子機序の理解に欠かせない。そのためには、蛍光イメージング、あるいはマーキングした細胞を単離し、単細胞レベルの遺伝子やタンパク質発現の検出・解析による性状解明は重要なアプローチとなる。本講演では、蛍光タンパク質可視化の基礎から、細胞から生体レベルに至るマルチスケールな蛍光イメージング技術の発展と、我々が進めている蛍光イメージングと単細胞レベルの遺伝子発現解析の融合によって見出した知見を示しながら、分子から個体レベルの生命現象理解のためのアプローチ法の発展と可能性を紹介する。
(2)皮膚炎における一次感覚神経のイメージング解析 演者:岡田 峰陽 先生(理研 IMS、横浜市大大学院 生命医科学)
炎症の制御には、末梢神経系が関わっていることが知られている。しかしながら、この制御を担う末梢神経系の微細構造や、機能の多様性・可塑性、周囲の細胞との相互作用ついては、未知の部分が大きく残されている。我々のグループは、ライブイメージングの手法を用いて、免疫細胞の組織内動態の制御機構を研究してきた。その経験をもとに、皮膚や腸管といったバリア組織の炎症と関わる末梢神経のイメージング研究を、蛍光レポーターマウスを用いて行っている。皮膚においては、アトピー性皮膚炎などのバリア減弱により発症する疾患において、かゆみの感覚神経の活性化が誘導されるメカニズムを、感覚神経と皮膚バリア構造の同時可視化や、感覚神経カルシウムイメージングにより調べている。また、皮膚の感覚神経の多様性を、単一細胞 RNA シークエンスによって解析し、皮膚炎の進行に伴って、それぞれの神経サブセットにどのような変化が現れるのかを調べている。このようなイメージング解析と単一細胞遺伝子発現解析を組み合わせることにより、感覚神経と皮膚バリアが密接に相互作用していることが明らかになってきている。 (3)生体イメージングで明らかにする脳免疫細胞の機能 演者:和氣 弘明 先生(神戸大学 医・システム生理)
学習・記憶・情動などの高次脳機能は様々な脳領域における個々の神経細胞が時空間的に整然と発火することによって、叙述的な神経細胞集団活動(=神経回路活動)を創出することで効率的に発現する。近年、これらの高次脳機能に伴う神経・グリア細胞集団の活動が2光子顕微鏡をはじめとした新規光学技術によって検出されるようになり、高次脳機能の発現に必要な機能的要素が明らかとなってきた。私たちは2光子励起レーザー顕微鏡によって、動物を生きたままで中枢神経系の神経・グリア細胞の構造・機能を可視化し、これまで中枢神経系の免疫細胞であるミクログリアが生理的環境においては絶えず、その突起を動かすことでシナプスを監視していること、障害脳ではシナプス除去に関与することを明らかにした(Wake et al., J. Neurosci, 2009)。またミクログリアが発達早期においてシナプス形成に関与すること(Miyamoto, Wake, Nabekura et al., Nature Commun, 2016)や、正常脳において、ミクログリアがシナプスに接触することによって、シナプス活動を増加させ、局所神経回路活動の協調性を制御している(Akiyoshi, Wake et al., eNeuro, 2018)ことも明らかした。また最近、ミクログリアが血液脳関門の透過性に寄与することも見出し (Haruwaka et al., revision)、総括的にミクログリアの生理機能を明らかにし、その病態への寄与を提案してきた(Wake et al., Trends in Neurosci, 2013, Miyamoto, Wake et al., Front Cell Neurosci, 2013)。今回はこれまで行ってきた研究を通して可視化技術で見えてきたミクログリアをはじめとしたグリア細胞動態の神経回路機能への寄与およびその病態への関与を議論したい。 日本実験動物医学専門医協会フォーラム抄録 「日本における微生物モニタリングの現状」 日時:2019年9月12日(木)14:00~16:00 場所:第9会場(中ホール300) 座長:伊藤麻里子(名大)、鳥越大輔(熊本大)
1.「バイオマテリアルの微生物検査」 林元展人(公益財団法人実験動物中央研究所ICLAS モニタリングセンター)
実験動物施設は外部との交通を極力遮断し、厳密なバリアを構築することでその微生物学的清浄度を維持している。人、器具・機材を除きこの実験動物施設に導入・搬入されるものとして実験動物や臓器、腫瘍、培養細胞などのバイオマテリアルが挙げられる。 実験動物においてはその微生物学的品質を保証する手段として微生物モニタリングがある。これはあらかじめ設定した項目を定期的に検査することにより動物ならびに動物飼育施設の微生物学的品質が一定に保たれていることを保証するものである。実験動物施設に搬入される場合は過去の微生物モニタリング検査成績を参考に検疫期間を設定し、その微生物学的品質を確認したのちに正式に導入されることが一般的である。同様にバイオマテリアルも搬入時に微生物検査が行われ、対象となる微生物が陰性であることを確認したのちに施設に搬入される。 実験動物では過去の情報の蓄積から検査対象とすべき微生物の多くは知られており、世界各国で若干の地域差があるものの検査パネルの大枠は決められている。一方でバイオマテリアルに関しては医薬品原料用の基準や検査関連企業が設定する検査パネルがあるが、その大枠は定まっていない。 演者の所属する(公財)実中研 ICLAS モニタリングセンターではバイオマテリアルに対し、マウス由来微生物を対象とした M-PSB、ラット由来微生物を対象とした R-PSB、ヒト由来微生物を対象とした H-PSB の 3 つの検査パネルを設定し検査を行なっている。 本講演では弊所 ICLAS モニタリングセンターでの検査結果をもとにバイオマテリアルの微生物学的品質の現状と今後の検査の展望について概説させて頂く。
2.「微生物モニタリングにおける蛍光ビーズ法の有効利用」 丸山滋(日本チャールス・リバー㈱モニタリングセンター)
実験動物の健康状態は試験研究の結果に影響を与える事から、その健康管理は実験動物を使用する者にとって最も重要な事項の一つである。実験動物が健康を損ねる大きな要因の一つは微生物感染であり、試験研究データの信頼性、動物福祉、実験動物施設管理などの面から、適切な微生物学的評価により感染の有無を把握し適切な微生物統御を行うことは非常に重要である。近年の実験動物の微生物評価において、適切な微生物学的評価の観点から、囮動物ではなく評価対象動物からの直接採材による病原微生物の評価が注目されている。囮動物では検出が困難な病原微生物の存在が一般的に知られてきたことがひとつの要因であるが、加えて、囮動物を用いずに済むことで囮飼育に係る手間や経費の削減とともに 3R のひとつ、Reduction に貢献できることもまた、重要なポイントである。 抗体試験は、病原微生物の感染履歴を確認することができる、優れた微生物モニタリング手法のひとつである。一方で、抗体試験手法として一般的に用いられている ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法は抗原プレートのウェル個別に反応を検出するシングルプレックスの手法であり、複数項目を試験する場合には評価対象動物を淘汰せずに充分量の血液を採取することは難しい。このことから、これまでは直接採材としての抗体試験の利用は困難であり、囮動物の使用に頼らざるを得ない状況であった。今回紹介する蛍光ビーズ法( MFIA® = Multiplexed Fluorometric immunoassay®)は、抗原を固着させた蛍光のマイクロビーズを用いて抗体検出を行うマルチプレックスな抗体試験手法であり、微量の血清で最大 100 項目の抗体を同時に検出可能である。専用の濾紙や綿棒を用い採取した乾燥血液を試料とすることで、体の小さいマウスでも動物淘汰を伴うことなく多項目の感染症の感染履歴を評価することができる。 国内外を問わず実験動物の授受がさかんに行われる昨今の状況からも、動物の淘汰を伴わず、授受の対象動物から直接血液採取をすることで多項目の感染症を確認できる方法は非常に有用である。本発表では、多方面から非常に優れた手法といえる蛍光ビーズ法の特徴を、日本国内の利用状況、欧米実績との違い、および微量採血方法等と併せ紹介する。
3.「嗚呼、肺パスツレラ」 池郁生(理研 BRC)
肺パスツレラ(Pasteurella pneumotropica、現 Rodentibacter pneumotropicus および R. heylii) は日和見感染症を起こすグラム陰性菌である。健康なマウスでは症状を示さず、免疫関連遺伝子に異常があるマウスで病態を見せることがある。一般に気管拭いスワブなどの培養検査を行なうが、コロニー判別が難しい。肺パスツレラには2種類のバイオタイプ(Heyl と Jawetz)があり、それぞれの 16S rRNA 塩基配列は異なる(上述のように各バイオタイプは独立した菌種へ再編された)。 理研バイオリソースセンター(BRC)が事業を開始した 2001 年からしばらくして、免疫関連遺伝子の欠損マウスが衰弱死した。肺に膿瘍が生じていた。重度の肺パスツレラ感染だった。本系統は寄託元の SPF 施設からそのまま BRC のバリア内に導入されていた。それ以来、清浄化を全系統で徹底することにした。 当初は微生物モニタリングを実中研 ICLAS モニタリングセンターに全面委託していた。数年後、自家検査を併用することとなった。自家検査は汚染床敷に暴露させた囮マウス(後述)を対象に行い、実中研には清浄化後の里親検査を依頼した。そのころ BRC では帝王切開による清浄化が広く行われていた。帝王切開の場合、0.1%ほどの確率で肺パスツレラを除去できない。飼育担当者と相談し、検査に出す前に里親から採取した拭いスワブで肺パスツレラ検査を行なうことにした。この効果は大きく、実中研から肺パスツレラ陽性の連絡が届くときは、我々も陽性結果を持つようになった。 BRC は免疫不全系統も扱うため、バリア内で飼育する全系統を対象に、胚移植した仮親(ICR)等から帝王切開で得た産仔を BALB/c nu/+の里親(黄色ブドウ球菌やカリニ(Pneumocystis murina)が不在)に育てさせるという方法を編み出した。これにより BRC 系統の清浄度は格段に向上した。里親の微生物汚染は BRC マウス全体の清浄化に大きく影響する。里親については、定期の囮検査のほか直接拭い培養検査やリタイア後の各個体検査も行い、何らかの陽性結果が出た場合は時間を 遡って関係系統の検査を行なうこととした。 飼育系統の囮マウスは使用済みの汚染床敷に暴露させた。本方式では病原体の検出感度が問題となる。BRC では個別換気方式ラックを使用しているため、500 を超える生体維持系統のモニタリングにはこれ以外考えられなかった。囮マウスのケージでは常に4匹飼育している。2ヶ月毎の囮検査には一番老齢のマウスを用い、5週齢のマウスを補充する。検査マウスは 28 週齢以上で最低でも6ヶ月は汚染床敷に曝露される計算になる。 囮マウスの検査で検出しにくいとされる病原体、特に肺パスツレラ検出を補完するため、BRC では上述の直接拭い検査を飼育系統の配置換えなどの機会に行ってきた。2016 年 12 月に判明したバリア内飼育マウスの肺パスツレラ汚染は、この直接拭い検査で明らかになった。我々は飼育全系統の肺パスツレラ検査を糞便 PCR で行い、陽性の疑いのある系統は直接拭い検査で肺パスツレラを分離し、胚移植等で清浄化した。 2016 年の時点で直接拭い検査の対象は、里親検査個体のほかコンジェニック化に必要な基本系統などにも広げていた。しかしいくつかの系統はこれら監視系統リストから漏れていた。この肺パスツレラ汚染判明ではモニタリングに穴があることが明らかになり、監視リストの再構築や提供予定個体の直接拭い検査、胚移植主体の清浄化移行等の対策を取った。 病原体は様々なルートから侵入する。これからも微生物環境の維持と向上に対応していきたい。
「Ⅰ.げっ歯類及びウサギの獣医学的管理」のウェットハンド研修会の第1回目は2019年5月12 日(日)~13日(月)に実施しました。 場所は福岡大学 アニマルセンターでした。
日程:2019年5月12日(土)8:30~17:40 2019年5月13日(日)8:00~18:00 場所:福岡大学アニマルセンター (〒814-0180 福岡県福岡市城南区七隈7-45-1)
研修費:30,000円(一般)、15,000円(学生)
講師:
研修内容:
第 1 日目〔5 月 12 日(日)〕 時間 内容 8:15~8:30受付 名札ケース、資料、飲み物受取り、懇親会費の支払い等 8:30~9:10開始に挨拶、諸注意、スケジュールの説明施設使用に関する教育 講師:田中先生 【講義】(9:10~12:40)於:視聴覚教室 9:10~9:40①概論(30 分) 講師:安居院先生 9:40~10:10②概論(30 分) 講師:黒澤先生 10:10~10:55 ③げっ歯類及びウサギの概論・飼育管理(45 分) 講師:高木先生 10:55~11:40 ④麻酔、鎮痛、安楽死について(45 分) 講師:安居院先生 11:40~12:20 ⑤げっ歯類及びウサギの感染症(40 分) 講師:林元先生 12:20~12:40 ⑥げっ歯類の遺伝子検査(20 分) 講師:田中先生 12:40~13:40 【昼食】弁当と飲み物ランチョン(夏目製作所) 13:40~14:00 実習室に移動 14:00~17:40 【実習】(13:30~17:10)於:実習室 14:00~16:30 ウサギの吸入麻酔、気管挿管に関する実習(150 分) 講師:黒澤先生、今野先生、桐原先生、高木先生 ★夏目製作所 ★ハクバテック 16:30~16:40 休憩(10 分) 16:40~17:40 ウサギの感染症に関する実習(60 分) 講師:林元先生、保田先生 19:00~21:00 【懇親会】(19:00~21:00)
第 2 日目〔5 月 13 日(月)〕 時間 内容 8:30~9:00・入場於:実習室 9:00~11:30【実習】(9:00~12:00) 9:00~10:30げっ歯類の麻酔・鎮痛に関する実習(90 分) 講師:黒澤先生、今野先生、桐原先生、高木先生 ★夏目製作所 ★ハクバテック 10:30~12:00 げっ歯類の感染症に関する実習(90 分) 講師:林元先生、保田先生
12:30~13:30 【昼食】弁当と飲み物ランチョン(ハクバテック) 13:30~16:30 【動物実験計画書演習】(13:30~16:30) 於:視聴覚教室 13:30~14:00 動物実験計画書の審査に関する講義(30 分) 講師:安居院先生 14:00~16:30 動物実験計画書の模擬審査に関する演習(150 分) 講師:安居院先生、黒澤先生、木村先生、田中先生 16:30~17:30 模擬試験(60 分) 17:30~17:40 実験動物医学専門医の心構え(10 分) 講師:黒澤先生 17:40~18:00 修了書授与黒澤会長 18:00 解散
協賛:夏目製作所、ハクバテック、フクダエムイー工業、プライムテック 受講者(25名)
「Ⅰ.げっ歯類及びウサギの獣医学的管理」 次回のウェットハンド研修会は下記のように実習・講義を実施致します。第2回 日程:2019 年 9 月 8 日(日)8:30~17:40 2019 年 9 月 9 日(月)8:00~18:00 場所: 公財)実験動物中央研究所(〒210-0821川崎市川崎区殿町 3-25-12) 定員:30 名
募集は、第 1 回、第 2 回を合わせて同時に 3 月 22 日(金)午前 10 時から会員用 HP より申込を受け付け、定員に達しましたので募集を終了しました。
受講料:30,000 円(一般)、15,000 円(学生)
研修内容: 1日目 受付開始 8:30 午前:講義 8:30~12:40 午後:実習 13:40~17:40
2日目 受付開始 8:45 午前:実習 9:00~12:00 午後:実験計画書演習 13:00~16:00 模擬試験と解説 16:00~17:00 修了書授与、解散 17:10~17:30
2019-2020年度総会開催案内 2019-2020 年度総会は、第 162 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)において、2019 年 9 月 12 日(木)11:00~12:00 に開催されますので、次号(No. 54)で報告いたします。
日本実験動物医学会 2017-2018〜2019-2020 年度役員会および委員会
<理事・監事>
会長(渉外担当理事兼任)安居院 高志(北海道大学) 副会長池郁生(理化学研究所) 理事(会計・事務局担当)角田茂(東京大学) 理事佐々木 宣哉(北里大学) 理事下田耕治(慶応義塾大学) 理事鈴木穂高(茨城大学) 理事(庶務担当)森松正美(北海道大学) 理事古市達哉(岩手大学) 監事黒澤努(鹿児島大学) 監事橋本道子(アステラス製薬) <各種委員会委員長> 学術集会委員会佐々木 宣哉(北里大学) 研修委員会久和茂(東京大学) 実験動物学教育委員会古市達哉(岩手大学) 情報・編集委員会鈴木穂高(茨城大学) 前島賞・功労賞選考委員会池郁生(理化学研究所) 実験動物法規等検討委員会下田耕治(慶応義塾大学)
理事会報告 2018-2019 年度 第 2 回日本実験動物医学会理事会議事録日時:2019 年 5 月 14 日(火)10:00〜12:00 場所:福岡国際会議場会議室(407 号室) 出席者:安居院、池、角田、久和、佐々木、下田、鈴木、古市(以上理事)、黒澤(監事) 欠席者:森松(理事)、橋本(監事)
議題 1.平成 30-31 年度決算報告(案)について 角田会計担当理事より平成 30-31 年度所属研究団体収支決算報告書(案)が提示され、若干の修正の後了承された。 2.令和 1-2 年度事業計画(案)及び予算(案)について 3.角田会計担当理事より令和 1-2 年度所属研究団体収支予算書が提示され、若干の修正の後了 承された。令和 1-2 年度所属研究団体事業計画書(案)は例年通りの内容に、理事選挙の実施を加えることで了承された。 4.JALAM 功労賞の施行について JALAM 功労賞については総会で承認され施行できる状態になっているが、獣医学会の了承が得られていない。獣医学会では前島賞や他の所属研究団体が実施している奨励賞についてまだ内閣府に届け出ておらず、これらをまとめて新規の事業として理事会に諮ったのちに内閣府に提出する予定である(久和理事・獣医学会理事長)。JALAM 功労賞についても、この時に新規の事業として一緒に理事会に諮ってもらい、承認された場合内閣府に届け出てもらうこととなった。 5.理事会運営細則の改定 若干の文言の修正ののち、資料 1 のように改定することが了承された。 6.事務局及び各委員会からの報告 (1)事務局(角田理事)より、今年度は現在までで 27 名の入会申請、12 名の退会(会費滞納による除名 8 名を含む)があったことが報告された。 (2)前島賞・功労賞選考委員会(池理事)より、前島賞の応募を HP で開始したこと、今年度から JALAM 会員でないと応募できないことを明記したこと、また、応募者の身元調査を事前に行うことが報告された。 (3)学術集会委員会(佐々木理事)より、JALAS 総会会期中に JALAM シンポジウムを開催したこと、秋の獣医学会の際にシンポジウムを開催する予定であることが報告された。 (4)実験動物学教育委員会(古市理事)より、モデルコアカリキュラムを改定中であ り、実習のモデルコアカリキュラムも改定していること、国家試験の出題基準、獣医学会疾患名用語集、コアカリ教科書の間で不整合のある感染症名があるので、疾患名の統一、国家試験の出題基準の見直し、コアカリ教科書への記載の見直し等を行う予定であることが報告された。 (5)情報・編集委員会(鈴木理事)より、サーバーおよび掲示板の件でアドスリーと会見したこと、ウェットハンド研修会の受講者への連絡の件で JCLAM 側と齟齬が生じていることが報告された。 7.その他 特になし。 前回理事会から今回理事会までの間に ML で下記の審議を行い、下記の通りに決した。
1.会費滞納により除名処分となった会員及び退会した会員の復帰について審議し了承された。 2.実験動物学教育委員会委員として、伊豆弥生会員(岡山理科大)及び塚本篤士会員(麻布大)の就任が了承された。 3.第 66 回日本実験動物学会総会 小野悦郎大会長より、教育セミナー「実践・実験動物の麻酔」の共催を依頼され、審議の結果了承した。 4.動連協より動連協が作成した動愛法改正の要望書に賛同を求められ、審議の結果賛同することとなった。 5.法規等検討委員会が作成した動愛法改正に向けた JALAM からの要望書について審議を行い、若干の修正を加えた上で環境大臣宛に提出することが了承された。
以上
理事会運営細則(現行) 1.理事会は日本実験動物医学会会則において定められたことのほか、本細則に基づいて運営される。 2.理事会の構成は選挙で選出された7名と、会長指名理事(3名以内)の計10名以内とし、理事会に下記担当理事をおく。 (1)庶務 (2)会計・事務局 (3)渉外 3.会長が必要と認めたものは理事会への出席を求める事ができる。ただし議決権はない。 4.理事会は毎年1回以上開催する。 5.本細則の改廃は理事会の議決による。
本細則は平成5年4月1日より実施する。 本細則は平成17年4月15日より実施する。本細則は平成25年4月 1 日より実施する。
改定 条項の追加 4.理事会の審議は会長が議長を務める。採決は議長以外の理事の投票により、過半数の賛成を必要とする。賛否同数の場合は議長の決定による。 5.理事会のメーリングリストを使用し審議を行うことができる。審議及び採決の方法は条項 4.と同様とする。
条項4、5をそれぞれ6、7とする。
本細則は令和元年5月14日より実施する。
委員会報告 1.実験動物学教育委員会 委員長:古市達哉(岩手大) 委員:横須賀誠(日獣大、副委員長)、安居院高志(北大)、浅野淳(鹿児島大)、 伊豆弥生(岡山理科大)、越後谷裕介(日大)、大杉剛生(酪農大)、岡田利也(大阪府大)、角田茂(東大)、木村透(山口大)、久和茂(東大)、佐々木宣哉(北里 大)、佐々木隼人(北里大)、佐藤雪太(日大)、竹内崇師(鳥取大)、田中あかね (東京農工大)、塚本篤士 (麻布大学)、富岡幸子(鳥取大)、二上英樹(岐阜大)、橋本統(北里大)、森松正美(北大)
(1)獣医学教育モデル・コア・カリキュラム有識者会議から、実験動物学のコア・カリキュラムの改訂作業について依頼があり、教育委員会として対応した。各委員の協力の下、実験動物学講義および実習のコア・カリキュラムの改訂案を作成し、有識者会議へ提出した。 (2)国家試験の出題基準、獣医学会疾患名用語集、コアカリ教科書の間で不整合のある実験動物感染症名が存在しているため、疾患名の統一、国家試験の出題基準の見直し等を行うワーキンググループを設置し、作業を進めている。 (3)第162回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)開催期間中、2019年9月10日(火) 13:00~14:00に委員会開催予定。
2.学術集会委員会 委員長:佐々木宣哉(北里大) 委員:岡村匡史(国立国際医療研究センター、副委員長)、北村浩(酪農大)、花木賢一(感染研)、佐々木隼人(北里大)、越後谷裕介(日大)、小久保年章(放医研)、 綾部信哉(理研)
(1)下記の通り、教育講演・シンポジウムを企画・開催した。第 66 回日本実験動物学会総会 日本実験動物医学会シンポジウム2019 年 5 月 14 日(火)13:00~15:00 テーマ「脊椎動物モデルとしての魚類の基礎と応用」 (2)下記の通り、教育講演・シンポジウムを企画・開催する。第 162 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場) 日本実験動物医学会シンポジウム2019 年 9 月 12 日(木)9:00~11:00 テーマ「先端生体イメージング技術が切り拓く動物実験の新たな可能性」
3.情報・編集委員会 委員長:鈴木穂高(茨城大) 委員:伊藤麻里子(名古屋大、副委員長)、綾部信哉(理研)、大沼健太(日本たばこ産業)、近藤友宏(大阪府大)、明貝俊彦(ふくしま医療機器開発支援センター)、和頴岳(ヤクルト)
(1)JALAM NEWS LETTER「実験動物医学」No.52(2019.4)を編集し、本学会ホームページ (HP)に掲載した。 (2)本学会 HP を改訂し内容を随時更新した。 (3)JALAM-ML(jalam@umin.ac.jp)および会員 HP (http://jalam.jp/htdocs/)を管理運営した。 (4)第 162 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)開催期間中、2019 年 9 月 10 日 (火)14:00~15:00 に委員会開催予定。
4.研修委員会 委員長:久和茂(東京大) 委員:中村紳一朗(滋賀医大、副委員長)、岡村匡史(国際医療研究センター)、倉岡睦季(日獣大)、小久保年章(放医研)、今野兼次郎(京大)、高木久宜(日本エスエルシー)、 林元展人(実中研)、藤澤彩乃(東大)
(1)第 66 回日本実験動物学会総会に合わせて、「I. げっ歯類及びウサギの獣医学的管理」のウェットハンド研修会第 1 回を実施した。また、第 162 回日本獣医学会学術集会に合わせて (9 月 8・9 日)第 2 回を開催予定。 (2)第 162 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)開催期間中、2019 年 9 月 10 日 (火)9:00~10:00 に委員会開催予定。
5.前島賞選考委員会 委員長:池 郁生(理研) 委 員:三好一郎(東北大、副委員長)、小野悦郎(九大)、岡本宗裕*(京大)、加藤啓子(京産大)、杉山文博(筑波大)、鈴木樹理**(京大)、中村紳一朗(滋賀医大)、山中仁木(信州大) *:2019 年7月まで、**:2019 年7月から
(1)第 161 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)における 2018-2019 年度 前島賞候補 者の選考が 2018 年 9 月 12 日(水)に行われ、下記の松田研史郎 会員が候補者として安居院会長に報告された。翌日(2018 年 9 月 13 日(木))の JALAM 総会で同会員が表彰された。
候 補 者:松田研史郎 会員(東京農工大学) 研究課題:未熟児網膜症病態発現機構の分子解析:マスト細胞の必要性
(2)第 162 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)開催期間中、2019 年 9 月 11 日 (水)11:00~12:00 に委員会開催予定。
6.実験動物法規等検討委員会 委員長:下田耕治(慶應義塾大) 委員:大沢一貴(長崎大、副委員長)、笠井憲雪(東北大)、二上英樹(岐阜大)、武井信貴子 (イナリサーチ)、横山政幸(武田薬品工業)
(1)第 162 回日本獣医学会学術集会、国立研究開発法人農研機構動物衛生研究部門(つくば国際会議場)開催期間中、2019 年 9 月 11 日(水)10:00~11:00 に委員会開催予定。 日本実験動物医学専門医協会 (JCLAM/IACLAM) 1.JCLAMからの挨拶 日本実験動物医学専門医協会会長黒澤努
本年の異常気象は想像を超えたところにあるようで、全国で一番熱い都市が北海道となったり、梅雨がなく過ごしやすい地域として著名な札幌市も熱帯夜が連続するなど、なかなか容易ではありません。 さて、1999 年の AVMA の”安楽死に関するガイドライン”を鈴木真先生にご協力いただき翻訳し、公表出版していました。この改訂版が 2013 年のガイドとして出版されたので早速 AVMA から翻訳許可をいただき翻訳作業に取り組んで来ました。この翻訳はだいぶん前に基本的な翻訳は終了していたのですが、種々の理由から出版には至っておりません。そうこうするうちに、我が国ではそれまで安楽死の処方として広く使用されていたペントバルビタールナトリウムが市場から姿を消し、実験動物界に少なからぬ混乱が起こっているようです。この混乱の大本は動物を安楽死させるための処方はだれが定めるのかが我が国では法的に明確でないこと、その一方、使用される安楽死薬のほとんどは法的に規制され、適切な投与が求められているところに存在しているのではないかと思われます。とくに実験動物医学の専門家の間に、これこそが自分たちの重要な役割であることの認識が不足していたからではないかと危惧しています。法的に明確な規定が我が国にはないとはいえ、獣医師がその専門知識を使って、適切な安楽死の処方を決めることは極めて妥当なことであり、最低何かの法律に抵触するような行為ではありえないと考えられます。そういたしますと、現在少なからぬ混乱があるとすれば、今こそ実験動物医学の専門家は情報交換を適切に行い、そこで集積された確実な情報を実験動物界さらにはバイオメディカルサイエンス分野に提供し、その進展に協力すべきと思われます。 本年になり AVMA は 2013 年のガイドをさらに改訂し、そのドラフトが AVMA 会員に回覧され、 2019 年 8 月 31 日までのコメントを求めました。ぐずぐずしていた自分を戒め、今回こそはしっかり翻訳作業を進めるべきと考え、元 IACLAM の会長であるパット ターナー先生にその意図を伝えてご協力を仰いだところ、IACLAM(世界実験動物医学専門医協会)の理事会を通じて、コメントを出して欲しいとの連絡がありました。早速 JCLAM 内にお知らせしてコメント募集を開始しております。原著作者である AVMA はこのドラフトをまだ公開はしておりませんし、主要改訂部分についても AVMA 会員内にて回覧してコメント募集している段階ですので、その内容を公開することはまだできませんが、すでに我が国の実験動物医学専門医はこの改訂案の検討を始めていることはお伝えしておきます。すでにお知らせしているように JCLAM は IACLAM 傘下の専門医の相互認証制度を発足させたところ、DACLAM から申請があり DJCLAM ともなっていただいた実績がありますので、AVMA 参加の団体である ACLAM から JCLAM の専門性に関してご理解をいただき、逆に ACLAM としても JCLAM を含む他の実験動物医学専門医協会の協力を求めたのだと理解しております。今後も JCLAM は JALAM を母体とした獣医専門医の集団として、他の実験動物医学専門医協会と連携し、バイオメディカルサイエンスの進展に力を尽くしたいと思っております。またこうした国際的に著名な文書がドラフトの段階で提供されることは今後我が国のバイオメディカルサイエンスが国際的に後れを取らずに展開していけることを意味しますので、積極的に IACLAM の活動に協力していかねばなりません。
JCLAM の活動を花井 JCLAM 総務部長がまとめられておりますが、IACLAM の動きは激しく、新しいいメンバー協会の情報が入ってきております。まずはインドですが LASA(Laboratory Animal Scientists’ Association)から IACLAM への加入の意図が示されました。このため LASA の年次大会の直前にワークショップを開催し、そこに IACLAM 関係者を招き、弾みをつけようとのことのようです。JCLAM 会長の私にも講演の打診があり、お話をさせていただくこととしております。とくに JCLAM の発足当時のお話と、その後 IACLAM 設立の経緯などの経験をお伝えできればと思っております。IACLAM の会長であるヒルトン クレイン先生も招待されているとのことですので、IACLAM の現状はクレイン先生にお任せしようと思っています。実は JCLAM から IACLAM への理事であり、IACLAM の総務部長である矢野先生も招待されたいましたが、矢野先生不都合でご出席にはなれません。今後 IACLAM 関係者は良く連絡を取り合って、話に重複のないようにしたいなとは思っております。LASA の会員は 500 名以上の実験動物獣医師が主体となる団体とのことですので JALAM も今後おつきあいする価値がありそうです。
JCLAM 独自の話題ではありませんが、私としてはどうしても皆さんに宣伝しておきたいことがあります。それは”実験動物”に公表された笠井先生の論文についてです。ご存知の通り笠井先生は前 JALAM 会長です。笠井先生は定年後も実験動物福祉に関する研究を継続されていますが、その一環として打越先生と共同で行ったアンケート調査の結果を原著論文として発表されたわけです。このアンケート調査も JCLAM 内ではすでに回覧されていて、内容は承知していましたから、笠井先生に会うたびに内容の公表を急かしていましたが、ようやくそれが出版されたこととなります (笠井先生論文 Experimental Animals 2019 July 68(3)307-318)。この論文の価値はあちこちにありそれは原著者である笠井先生に伺っていただくこととして、私としては以下の部分に注目していただきたいのです。 Survey report on public awareness concerning the use of animals in scientific research in Japan. 質問6 1、動物実験にどのような印象をお持ちか? 科学医学の発展に寄与していると思う 賛同 28% どちらかというと賛同 42%で、合計 70%が賛同 原著は英文ですので私のまずい翻訳は後で笠井先生に訂正していただくとして、この部分に注目していただきたいのです。なんと我が国民の 70%が動物実験は科学医学の発展に寄与していると考えていてくれているのです。これを例えば米国の世論調査の最も権威があるとされるギャロップの調査結果と比較していただきたいのです。もちろんその質問の趣旨は若干異なりますが、動物による医学試験が倫理的に許容されるかとの質問に 2001 年の段階ですでに 65%であり、その後劇的に低下し、2019 年ではわずか 51%の方が許容すると答えたのみでした。さらにこれの裏打ちとして、社会一般の事で倫理的に誤っていると考える項目を列挙した表内に動物による医学試験が上位を占め、2001 年ではわずか 26%の方しか倫理的に許容できないとしていたのに 2019 年では 44%の方が倫理的に許容されないとしているのです。米国に比較して、我が国の国民がいかに動物実験を信頼していてくれるのかを示す事実です。ただし笠井先生の論文にもある通り、実験動物の苦痛に関しては極めて厳しい判断を国民がしていることも併せてご理解いただき、JALAM, JCLAM は手を携えて、実験動物医学とりわけ実験動物福祉に貢献してゆくことこそが我が国のバイオメディカルサイエンスの発展に重要であるかを認識していただきたいのです。
こうした内外の動きをとらまえてISO TC194 Biological and Clinical Evaluation of Medical Devicesの枠組みでISO10993-2 Animal Welfare Requirementを本年10月にも改訂し、我が国が医療機器開発の分野でも世界に先んじて実験動物医学が貢献していることを文書として残していこうと考えております。このWGはISOでは珍しくアジア人である私が議長を務めていますので、皆様のご協力を得て、我が国発の実験動物福祉の向上に寄与できるようにしていきたいと思っております。 2. 2019-2020年度総会開催案内 2019-2020 年度総会は、第 162 回日本獣医学会学術集会(つくば国際会議場)において、 2019 年 9 月 12 日(木)(第 9 会場)にて開催されますので、JCLAM 会員の方は参加ください。参加の難しい方は、委任状の提出をお願いいたします。総会の内容及び結果については次号(No. 54)で報告いたします。
3. 第12回理事会報告 日時2019 年 5 月 16 日15:00-17:00 場所日本実験動物学会(福岡国際会議場)3 階 3E 会場 出席者(理事)黒澤、安居院、鈴木、瀬戸山、黒木、池田、木村、伊藤、高橋、佐々木、花井 (監事)笠井、佐藤
1.理事、委員長、委員の任期 ・任期について、以下のとおりに明確にした。 理事:理事選挙後の総会で承認された直後~翌理事選挙後の総会で新理事が承認されるまでの 3 年間。但し、試験問題作成委員長については会長選任理事として、総会を基準とし て 1 年毎に交代する。 委員長:委員長、総務部長は理事の任期と同一の 3 年間。ただし、試験問題検討委員会、認定委員会の委員長は、新理事承認の総会が行われた年の認定日~翌新理事承認の総会が行われる年の認定日までの 3 年間。試験問題作成委員会の委員長は認定日から翌年の認定 日までの 1 年間。 委員:委員長の任期と同一。 ・上記内容を明確にした会則の変更、理事細則の変更、委員細則の作成を速やかに行う。 ・総会では理事を承認するが、委員長人事は理事会マターで総会の承認は必要としないことを確認した。
2.認定規則関連事項 (1)認定規則における正会員以外の扱いについて、従来の予備登録を見直し、予備登録と復帰登録に分割するとともに生涯実験動物医学専門医を含めそれぞれについて、以下のように定めた。 ・生涯実験動物医学専門医:①認定委員会の認定審査(現役引退か否か等)を受けて認定される。 ②公式に JCLAM 認定生涯実験動物医学専門医を名乗ることが可能。③5 年毎に更新が必要 (連絡先の連絡)。連絡が取れなくなった場合は資格喪失。④認定から 5 年以内であれば、正会員に復帰できる。⑤審査・認定費用・更新費用は不要。JALAM 会員でなくてもよい。協会運営以外の活動には参加できる。 ・復帰登録:①何らかの事情で正会員の活動が困難な場合、復帰登録に申請して活動を停止し、更新までの期間を延長することができる。②復帰登録期間中は DJCLAM を名乗ることはできない。③復帰登録の期間は最大 5 年間で、それまでに復帰しない場合は資格喪失となる。④正 会員復帰後の更新に際しては、復帰登録期間を除外した 5 年間の活動を審査する。⑤復帰登録期間中も JALAM 会員であることが必要。⑥JCLAM の ML には登録され、情報交換を行うことは可能。 ・予備登録:①正会員が協会退会を希望した場合、また専門医更新を辞退した場合、自動的に予備登録に登録される。②JCLAM 認定医を名乗ることはできない。③予備登録期間は 5 年間とし、その間に正会員に復帰する希望があれば復帰できる。復帰の意思表示がなければ完全に資格を喪失する。④復帰後の更新の際には、予備登録期間を除外して、正会員として活動した 5 年間の単位を審査する。⑤予備登録期間中は、JALAM 会員でなくてもよい。⑥JCLAM の ML から除外され、情報交換はできない。 ・上記内容で認定規則を改定する。
(2)JCLAM への貢献の期間 ・更新申請のために JCLAM への貢献が必須となったが、委員会の活動期間は審査申請時期(5 月 31 日までの単位)と異なるため、どの年の貢献とするか明確にしておく必要がある。 ・審査申請の時期をまたいだとしても、1 か年の継続した活動は 1 回と数える。委員会の委員長 が「〇年度の貢献」として認定し、名前の登録だけで実活動のない場合は貢献として認めない。
(3)IACLAM 傘下協会専門医の JCLAM への入会条件 ・JCLAM への入会条件は、審査料 10,000 円、認定料 10,000 円(認定盾支給)とし、年会費は不要とすることを確認した。 ・この条件は既に認定規則に盛り込まれているため、新たな規則は制定しない。
(4)公募問題の認定時期 ・JCLAM 認定試験の試験問題の公募は 1 月から 3 月に行われる。提出した公募問題の認定数は認定試験後に試験問題作成委員長から認定委員会、総務部、提出本人に報告する。 ・ただし JCLAM への貢献として更新審査に必要な場合で、更新者から試験問題作成委員長に申請があった場合は、その年に提出した問題数の認定を 5 月末までに行う。
3.各委員会報告/審議 (1)レジデントプログラム委員会 ・レジデントプログラムの概要について決定したことを報告。 ・レジデントプログラム委員会で作成したフォームに基づいてプログラム責任者が申請し、レジデントプログラム委員会の審査を経て、理事会でプログラムを認定する。プログラム受講者は同じくレジデントプログラム委員会の作成したフォームで研修内容をチェックし、プログラム責任者のサインをもらい、JCLAM に申請する。プログラム内容に応じて専門医受験資格が付与される。不足する分は従来の WH 研修を受講する。受験資格の認定は認定委員会で行う ・フォームは次回委員会で決定し、 |